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仮想通貨マーケット特集  最終章:「悪いマーケット」の見つけ方

これまで仮想通貨マーケット特集では、仮想通貨市場の構造をより良く理解するために不可欠な概念について学んできました。マーケットの定義にはじまり、取引板の構造、そして様々な種類の注文について解説しました。また仮想通貨業界の報道に見られる一般的な誤解も紹介しました。今回の最終章では、「悪いマーケット」の見つけ方を通じて、仮想通貨市場と関連業界のニュースの質を見極めるための知識を身に付けていただきます。

「悪いマーケット」の見つけ方

これまでに学んだ知識を使って、まずは一部の取引所が行う取引量の操作と流動性の偽装についてみてみましょう。

クラーケンのような規制された取引所は、こういった活動を禁止している上、第三者機関によってウォッシュトレード(作為的に取引高を割り増すこと)がないと報告されています。しかし、世界には架空の大量取引を市場に流すことで新しいユーザーを引き込もうとする取引所もあります。一部の独立した第三者機関の調査によれば、取引量の90%近くまでウォッシュ・トレードを行っている取引所もあります。一部の取引所やプロジェクトは、CoinMarketCapのような取引所ランキングサイトで上位に掲載されるように作為的に取引量を増やすことを目指しています。

偽の取引量はどのように作られているのでしょうか?取引所が偽の取引量を創造する方法は様々ですが、今回は、最も一般的な2つの方法について説明します。

1.ウォッシュトレード
2.取引手数料マイニング

ウォッシュトレード

ウォッシュトレードとは、トレーダー(または取引所)が自分自身と取引し、リスクを取ることなく取引量を作り出す活動です。この方法では、取引板に指値注文を出してから、その注文とマッチする反対の注文をします。

例えば、10,000USDTで1BTC / USDTの指値注文を出した後、1BTC / USDTの売り注文を出して既に行われた指値買い注文とマッチさせる行為です。表示上は1 BTCが交換されたことになりますが、実際に交換されたのは0BTCです。

ウォッシュトレードは通常、取引所の協力の下、手数料免除で行われます。ちゃんとした取引所は、そういった行為を禁止しています。私たちの見解では、一部の取引所は独自のウォッシュトレードのアルゴリズムを内部で意図的に運用している可能性もあります。

私達は、ある取引所で実際にウォッシュトレードを試してみました。

図1:ウォッシュトレードのデモンストレーション

まず、ウォッシュトレードを行っている疑いのある取引所に口座を開設しました。図1は、この取引所のEOS / BTCで小口の取引をしている我々のチームです。

この取引では、取引開始時に24時間の取引量が1億300万ドルだったとされます。2.466 EOS(注文時点で約10ドル)の売り注文を出した後、30秒以内にEOS/BTCは0.00105BTCから0.00046BTCまで56%上昇しました。一方、興味深いことに、同じ30秒で、我々以外で11,158EOSが取引されたにもかかわらず、価格に大きな影響をはありませんでした。もし実際にウォッシュトレードの結果によるとしたら、実際の取引量は1億300万ドルの0.02%に過ぎないことになります。

取引手数料マイニング

取引手数料マイニングという手法を使って、洗練されたウォッシュトレードを隠す取引所もあります。

この手法は、取引所発行のトークンを使って取引手数料をユーザに払い戻し(リベート)します。1ドルあたりの手数料につき1.2ドル相当の「XYZ」取引所トークンを払い戻すことで100%以上のリベートをするケースもあります。取引手数料マイニングによって、ユーザーはウォッシュトレードを行う際にリスクを取らずに恩恵を受けられるようになります。

取引手数料マイニングを行う取引所を特定するのは簡単です。なぜならこうした取引所は広告でこの手法を公開しているからです。こうした取引所が自己申告する取引量はかなり誇張されていることになるので、流動性を測る指標として使うべきではありません。

ウォッシュトレードは、正しい情報を得ていない投資家にとって手痛いスリッページに巻き込まれる可能性を示しています。取引する際は、ウォッシュトレードには警戒しましょう。

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