これまで仮想通貨マーケット特集のシリーズでは、マーケットやトレード、流動性など仮想通貨市場を理解する上で必要な基礎知識について解説してきました。しかし、こうした知識を持っていても、マーケットのシグナルを誤って解釈してしまうことが多々あります。今回は、そうした「誤解」を1つ1つ解いていきます。
誤解1: ビットコインの価格は1つしか存在しない
誰かがビットコインの価格を尋ねた時、あなたは「それは状況による」という答えを聞いたことがあるかもしれません。実は、この答え、あまり悪くない答えです。例えば、1バレルの原油や1ガロンのガス価格には世界共通で1つの価格が存在していますか?間違いなく、ありませんね。
世界のどこかにある地元の小さな取引所では、限られた地域内での需給の関係から、他の取引所と比較して2、3%近い誤差で異なるビットコイン価格を提供しているかもしれません。
取引所間の価格差に目をつけた取引手法も存在します。異なる取引所から同時に資産の売買を行なって価格差から利益を得る方法は、「アービトラージ(裁定取引)」と呼ばれています。
誤解2: 取引量が多ければスリッページは起きない
2つ目の誤解は、取引量が多い資産であれば価格の乱高下が一切起きないというものです。取引量は、ある時点において交換される資産の総量です。取引量の多い活発なマーケットは、典型的には(いつもではないが)異なる価格におけるビッドとアスクが多数提示されています。
この深さは、買い手のビッドと売り手のアスクの間におけるスプレッドを縮めることになるかもしれません。しかし、過去の取引量とスプレッドだけを見て資産価格を分かったつもりになってはいけません。
取引板の厚さは、価格がどちらかの方向に動く前にどのくらいの取引量がサポートできるかを示しています。アスクの厚さとビッドの厚さは、それぞれの価格でどのくらいの取引量がサポート可能かを示しており、もし板が薄ければ価格を支えるのに十分でないと判断できます。
現在のビッドやアスクで取引可能な資産の取引量以上の注文を出せば、その注文によって取引可能な全てのビッドとアスクが吸収されてしまうため、価格は大きく動きます。これは、価格スリッページとして知られています。スリッページによって、投資家は、予想価格より高い(低い)価格でポジションをとる(手仕舞う)ことになります。
例えば、5つのアボガドが1つあたり1〜2ドルで売られているとします。ある買い手が市場価格で農家から6つのアボガドを買う時、農家Aから1ドルのアボガドを5つ買えますが、農家Bからは2ドルで買うことになります。なぜなら、全ての1ドルのアボガドはもう全部売り終わっているからです。
このシナリオでは、過去にどのくらい多くのアボガドが売られていたとしても、その事実が2ドルへのスリッページにならないと保証するわけではありません。
それぞれの価格における取引板の厚さこそが、市場価格の反応を見極める手段になります。
誤解3: 取引板の厚さ=流動性の高さ
もう1つのよくある誤解は、取引板の厚さが流動性の高さと考えることです。実際には流動性の指標として、取引板の厚さ以外にビッドとアスクのスプレッドを見なければいけないと指摘することは重要です。取引板に100ドルをベストビッドとした10億ドル分のビッドと900ドルをベストアスクとした10億ドル分のアスクがあるとしましょう。取引板にあるビッドとアスクの取引量は大きいですが、全く異なる両極の価格ポイントに取引量が集中しており、ビッドとアスクのスプレッドが大きくなっています。このマーケットでは参加者がどちらか極端な価格を選ばなければ自由に取引することは困難であり、かなり流動性がない状態と言えます。
より単純化して、以下のように考えてみましょう。あなたはファーマーズマーケットで5つのアボガドを買いたいと考えており、1つ1ドルを支払うつもりがあります。しかし売りに出されている10個のアボガドはそれぞれ10ドルです。このアボガド市場は、供給量は十分であるが流動性は低いと言えます。
流動性の高い市場は、より多くの取引量を吸収することができ流ため、ボラティリティが低くなります。それゆえ、市場価格に近い価格での売り(買い)やすさを取引板で見極めることが、市場の流動性を決める上で良い方法です。
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